「棟梁の娘」の入力が終わった

「棟梁の娘」の入力が終わった。

河出書房版の全集は原則として作品の発表年代順に収録されている。このため第1巻の第1話は「金色の処女」である。
中央公論社が出した「銭形平次捕物百話」に書き下ろされた9編を除けば、野村胡堂は銭形平次をオール讀物誌に書いていたので、第7巻の150話までの順序は正確であると思われるのだが、第8巻からはいささか怪しくなってくる。
というのは、河出書房が銭形平次捕物全集を刊行する際に底本としたと思われる同光社磯部書房版の全集では、初出誌が不明となっている作品があるのだが、河出書房版では発表年代順にこだわったためか、初出の不明な作品を推定によって年代順に組み入れたと思われるものがある。ところが初出誌の調査が不十分であったために、順番にはかなり多くの誤りがあるのだ。
この「棟梁の娘」もその1例で、河出書房版全集では「昭和18年書き下ろし」となっているのだが、これにはかなり疑問がもたれるのである。
まず、そもそも銭形平次の短編は、それ1作だけでは短すぎて本にならない。ペラペラのパンフレットのようになってしまう。このため何作かを纏めないと本にならないのだが、戦時中にこのような単行本を出せる本屋は限られており、またそれだけに出版されていればどこかには残っていそうなのだが、その気配が無い。「書き下ろし」ということ自体が考えにくいのである。
また、杜陵書院が昭和22年に出した「百話以降銭形平次捕物全集」には収録されておらず、単行本では昭和25年に講談社が「長編小説名作全集」の中の1冊として出した「銭形平次捕物三十六佳選」まで本作品を収録したものが無い。他にも外来語が使われている点など戦時中の作品とは考えにくい点があり、昭和22年から24年ごろに書かれた作品ではないかと思われるのだ。
実は、この作品は昭和24年9月に発行された「月刊讀賣 秋季臨時増刊」に収録されている。
目次を見ると、錚々たる作家がならんでおり、しかもそのうちの数篇は、この本への書下ろしであることが確認できている。
カストリ雑誌とは異なり、読売新聞社が出していた雑誌であるから、安直な再録作品ではなく、この本に書き下ろされた作品と考える方が妥当に思うのである。筆者はこの「月刊讀賣 秋季臨時増刊」が「棟梁の娘」の初出誌であるものと考えている。

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