「吹矢の紅」「白紙の恐怖」を入力した。

「吹矢の紅」と「白紙の恐怖」の2編の入力が終わった。
どちらもなかなか面白い作品なのだが、それぞれ一風変わったところがある。
まず、「吹矢の紅」、平次の女房のお静が両国で昔の馴染みの知合いの女性がしょっ引かれるところに出会うところから始まり、お静は八五郎に直接助けを求める、平次は甲府に行っていて不在、というシチュエーションも珍しいのだが、この作品では石原の利助親分は他界した後の設定となっており、娘の「女御用聞」と言われたお品は、御用聞をやめて山の手へ引越し、子分達は散り散りになって、その縄張りは四つ目の銅六という親分に奪われているという筋書きなのである。
野村胡堂がどういう気まぐれから、お品を引退させてしまったのか分からないが、銅六はその後は登場した気配もないし、お品はそれ以降の作品でも、何事もなかったように再登場するので、お品の引退は、まあ、作者の気まぐれと言うしかない。
「白紙の恐怖」は白紙の脅迫状が月1回決った日に来るというものだが、作者にとっては印象深い作品だったのか、10年近くたって書かれた「娘と黒法師」の中でも「白紙の手紙」には触れている。
しかし、この話がなんともユニークなのは、真犯人を特定し膝の下に敷いた、というところで終わるところであろう。犯人を番所に引き渡し、その後で八五郎にせがまれるままに謎解きを話すという通常のパターンから外れているのである。
昭和15年から昭和17年にかけての作品は、それ以前に比べると、オール讀物の誌面が逼迫してきたためか、いくぶん短めになっており、この作品の終わり方も、原稿枚数の制約で、否応なしに端折らざるを得なかったのかもしれない。

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