「妹の扱帯」の初出が判った


今日は、「妹の扱帯」の初出が、偶然に判った。本当に偶然と言うしかない。


そのきっかけは、「日本の古本屋」のサイトを見ていたら、昭和23年2月号の「実話と読物」(博文閣)に銭形平次の「紅い扱帯」が載っていることが分かったのだが、「紅い扱帯」はオール讀物の昭和17年9月号に掲載されている作品なので、戦後の雑誌にしばしば見られる過去の作品の再録のケースの一例と考えていた。まあ、再録の事例として購入しても良いかな・・と考えて、あまり期待もせずに購入し、それが今日、届いたのだが・・・・。
表紙は、「紅い扱帯」で、別段特に何もなく、四六判の雑誌なんだな、程度の印象だが、「おやッ?」と思ったのは目次を見たときである。新作長篇「紅い扱帯」と書かれているからである。
いや、初出は17年のオール讀物だから、そんなことはないでしょ・・・と思いながら、本文を読むと、
「親分、凄いのが来ましたぜ、へッ」
「何が来たんだ、大屋か借金取か、それともモモンガアか」・・・ディオゲネスのような寛々と朝の日向を楽しんでいる・・・
「あれ、待てよ。モモンガアとディオゲネス?これどっかで最近見たぞ?」ということで、調べ直してみたら、「紅い扱帯」ではなくて、「妹の扱帯」の冒頭部であったのだ。
この号では完結しておらず、
「乞御期待」事件は事件を生んだ。犯人は誰か銭形平次の推理は如何に転回してしてゆくか、微妙な空気に包まれて本事件の解決は次号に持越された。
という文章があり、昭和23年3月号までの2回連載となったことがわかる。
数日前に報知出版社が昭和23年9月に発行した単行本の「娘十一人」に妹の扱帯は収録されているので、この本での書き下ろしか?と考えていたのだが、そうではなかった。初出は昭和23年2月号~3月号の「実話と読物」なのであった。
それにしても、今までこれが見つかっていなかった理由は、ある意味では明白なのである。
実話と読物の昭和23年2月号には銭形平次が掲載されていることは、それなりに研究者の間では知られていたと思うのだが、誰もが「これはオール読物の再録」と中身を見ずに決め付けてきたのであろう。まさか過去の作品と同じ名前で新作が書かかれてしまうようなことが起ったとは想像も付かない。だから埋もれてしまったのであろう。



さすがに報知出版社で単行本に所収する際に、昭和17年の「紅い扱帯」の存在に気づき、「妹の扱帯」に改題されたのだろう。
実はこれと似たようなことが銭形平次には事例がある。「実話と読物」昭和26年11月号が初出の「転婆娘」と、昭和30年8月に報知新聞に連載された「お転婆娘」は別の作品なのだ。
どちらのケースにも実話と読物と報知新聞社が絡んでいるところは因縁めいてさえいるのが面白い。


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