「名画紛失」の初出誌

「名画紛失」の初出は、同光社版では昭和27年キング8月号となっていて、それが河出書房版では昭和25年のキング臨時増刊とされ、文春文庫版では鳥兎沼佳代氏がそのまま昭和25年のキング増刊と書き写している。
ところが昭和25年にはキングの増刊号が無い、そもそも出版されていないのだ。嘘っぱち、でっちあげなのである。
もちろん昭和27年のキング8月号にも掲載は無い。
で、途方に暮れていた一編なのだが、先日、ある方にご教示いただいた雑誌の新聞広告で調べる方法を実践してみたところ、昭和23年にキングの別冊の新聞広告が読売新聞に掲載されていた。ところが「銭形平次 野村胡堂」とあるだけで作品名までは書かれていない。
再録の可能性もあるのだが、駄目もとと思いつつ、図書館の蔵書の有無を調べたら、日本近代文学館にあることがわかった。さっそく日本近代文学館を訪れて確認したところ、キング別冊第1号「面白ずくめ 小説・読物特集号」(昭和23年9月25日発行)で、そこには目出度く「名画紛失」が掲載されていたのである。

さて、同光社の27年が、河出書房版では昭和25年に訂正されている点だが、実際の27年8月号に掲載されていないこともあるが、昭和25年の長篇小説名作全集(講談社)に載っているのだから、当然初出は昭和25年以前なわけだ。ところが昭和25年のキングには掲載が無いため、そこで昭和25年の「増刊」と推定したのではないか。それを鳥兎沼佳代氏は河出書房版を鵜呑みにして事実確認もせず書き写したわけである。こうしたいい加減な調査が繰り返された結果、銭形平次の初出情報はひどく精度の低いものになってしまい、それがインターネットで拡散されて手のつけられないような状態になってきている。今回筆者が初出調査にこだわるのは、これ以上不正確な情報を蔓延させたくないという思いからである。
meigafunshitsu.jpg

この記事へのコメント